出店コンサルティングとは?依頼できること・できないことを正直に整理しました

結論

出店コンサルティングとは、物件を紹介する仕事ではありません。「どこに、なぜ出すのか」を決めるための調査と助言を行う仕事です。不動産仲介とは、目的も報酬の仕組みも、必要な免許も違います。

依頼できるのは意思決定の材料をつくるところまで。物件そのものの紹介や契約の仲介は、宅地建物取引業の免許を持つ仲介会社の仕事です。この記事では、その境界線を具体的に整理します。

「出店コンサルタントに相談したほうがいいのだろうか」と考えたとき、まず引っかかるのは「不動産屋さんと何が違うのか」という点だと思います。

この違いが分かりにくいのは、どちらも「店舗の場所」に関わる仕事なのに、やっていることがまったく別だからです。しかもこの業界には、両者を兼ねている会社も、コンサルと名乗りながら実質は物件紹介をしている会社もあります。

だからこそ、依頼する側が境界線を知っておく必要があります。順番に整理していきます。

出店コンサルティングとは、何をする仕事か?

ひとことで言えば、「その事業が、どこで、どういう条件なら成り立つのか」を調べて、判断できる状態にする仕事です。

物件を探す作業はその後に来ます。順番としては、事業の中身を整理し、顧客像を固め、その顧客がいるエリアを特定し、そこから具体的な物件の条件へ落としていく。この前半部分を担うのが出店コンサルティングです。

具体的な業務としては、次のようなものがあります。

  • 商品特性とターゲット顧客のヒアリング、言語化
  • 出店すべきエリアの調査と提案
  • 商圏分析(人口構成、昼夜間人口、所得水準、競合の分布など)
  • 現地調査(人の流れ、滞留する場所、道路や歩道の状況、周辺テナントの稼働)
  • 候補物件が事業として成立するかどうかの分析
  • 賃貸条件が妥当かどうかの確認と助言
  • 出店後を見据えた集客・広告・SNSの設計

会社によって範囲は変わりますが、共通しているのは「物件を売る立場ではない」という点です。これが次の話につながります。

不動産仲介とは、何が違うのか?

一番大きな違いは、報酬が何に対して支払われるかです。

不動産仲介の報酬は、契約が成立したときに発生します。つまり、契約されなければ収入になりません。一方で出店コンサルティングは、調査と助言そのものに対して報酬が発生します。

この違いは、依頼者にとって重要な意味を持ちます。

比較項目 出店コンサルティング 不動産仲介
目的 出店の可否と場所を判断できるようにする 物件の契約を成立させる
話の始まり方 「何を売るのか」「誰に売るのか」から 「どのエリアで」「どんな物件を」から
報酬が発生する時点 調査・提案を行った時点 契約が成立した時点
「やめたほうがいい」と言えるか 言える(報酬が契約に依存しない) 言いにくい(契約しないと報酬が出ない)
必要な免許 不要 宅地建物取引業の免許が必要
主な成果物 調査結果・エリア提案・分析資料 物件情報・契約書類

表の4行目が、実務上もっとも効いてくる違いです。「この物件はやめたほうがいい」と言える立場かどうか。仲介会社は契約が成立しなければ報酬を得られないため、構造的に「契約しない」という結論を出しにくい立場にあります。これは担当者の人柄の問題ではなく、報酬の仕組みの問題です。

コンサルティングは調査と助言に対して報酬をいただくので、「今回は見送るべきです」という結論もそのまま出せます。判断材料を求めて相談するなら、この違いは知っておいて損はありません。

なぜ「免許」の話が出てくるのか?

ここは依頼する前に知っておいていただきたい部分です。

宅地建物取引業法では、宅地や建物について①自ら売買・交換する、②他人の売買・交換・貸借を代理する、③それらを媒介する——このいずれかを業として行う場合に、宅地建物取引業の免許が必要と定められています。「業として」とは、不特定多数を相手に反復・継続して行うことを指します。

つまり、物件を紹介して契約に結びつける行為(媒介)は、免許がなければ行えません。一方で、エリアの調査、商圏の分析、出店の可否に関する助言といったコンサルティング業務そのものには、免許は必要ありません。取引の代理や媒介にはあたらないからです。

ここで注意したいのは、「コンサルティング」という名前で呼んでいても、実態が物件の媒介であれば免許が必要になるという点です。名称ではなく、実際に何をしているかで判断されます。

依頼する前に、この2つを確認してください。

ひとつは、その会社が宅地建物取引業の免許を持っているかどうか。免許業者であれば、免許番号を必ず表示しています。もうひとつは、物件の紹介や契約手続きを誰が行うのか。コンサル会社が自社で行うのか、提携している仲介会社が行うのか。ここが曖昧なまま話が進む会社には、理由を尋ねたほうがよいと思います。

※ 個別の行為が宅地建物取引業に該当するかどうかは事情によって判断が分かれます。正確な判断は所管の窓口や専門家にご確認ください。

プラスバリューの場合、担当しているのはエリアの提案と調査、物件の分析、賃貸条件に関する助言までです。物件の紹介と仲介については、提携している不動産仲介業者が行います。役割を分けることで、「契約させるために勧める」という力が働かない状態を保っています。

出店コンサルに依頼できることは何か?

会社によって差はありますが、一般的に依頼できるのは次のような範囲です。

1. 出店エリアの提案

「◯◯駅で」と場所を指定しなくても相談できるのが、コンサルティングの特徴です。商品特性とターゲット顧客から逆算して、候補となるエリアそのものを提示してもらえます。

2. 商圏調査・現地調査

統計データによる商圏分析と、実際に現地を歩いての調査。人の流れ、滞留する場所、時間帯による客層の変化、歩道や道路の状況など、地図と数字だけでは分からない部分を確認します。

3. 候補物件の事業リスク分析

他社から紹介された物件について、「この賃料と立地で、この事業は成り立つのか」を精査してもらうこともできます。物件を紹介した会社とは別の視点で見てもらえる点に意味があります。

4. 賃貸条件についての助言

賃料が相場に対して妥当か、契約形態にリスクはないか、退店時の条件はどうなっているか。契約書の条項レベルでの確認と助言です。

条項の確認がなぜ必要なのか、実例でお伝えします。ある店舗オーナーは、出店から数年たって、契約書に「空調機が故障した場合は、テナントの負担で修理または交換する」という特約があることに気づきました。空調機はビル側の設備です。それにもかかわらず、修理や交換の費用はテナントが負担する取り決めになっていたのです。

契約のときに、説明は受けていたのかもしれません。ただ、出店準備の時期は物件の契約以外にもやることが多すぎて、この一文の重さにまで気が回りませんでした。業務用の空調機は、修理でも交換でも多額の費用がかかります。

民法では、建物の修繕は原則として貸主が負担するものとされていますが、特約で借主の負担に変えることができます。事業用の賃貸借契約では、こうした特約は珍しくありません。特約の欄は、将来いくらかかるのかに置き換えて読むことをおすすめします。

5. 出店後の集客設計

広告やSNS、ウェブサイトなど、開業後の集客までまとめて相談できる会社もあります。立地と集客は本来つながっているため、同じ担当者が見ているほうが整合性は取りやすくなります。

逆に、依頼できないことは何か?

ここを誤解したまま依頼すると、期待とずれます。

物件の紹介・仲介そのもの(免許がない会社の場合)

前述のとおり、物件の媒介には宅地建物取引業の免許が必要です。免許を持たないコンサル会社の場合、物件の紹介や契約の手続きは提携する仲介会社が担当します。依頼する前に、どちらが行うのかを確認してください。

契約の代理

依頼者に代わって契約を締結する行為も、代理にあたるため免許が必要です。条件交渉の進め方について助言を受けることと、代わりに交渉・契約してもらうことは別物です。

売上の保証

これは免許の話ではなく、原理的にできないことです。立地は売上に大きく影響しますが、売上を決めるのは商品とサービスと運営です。「この場所なら月商◯◯万円を保証します」と言う会社があれば、むしろ警戒したほうがよいと思います。

融資の可否の判断

事業計画の整理を手伝うことはできますが、融資が下りるかどうかを決めるのは金融機関です。ここは税理士や認定支援機関など、別の専門家の領域になります。

どんな人が依頼すべきか?

正直に書きます。全員に必要なものではありません。

依頼する価値が高い人

  • 出店したいエリアがまだ決まっていない、または決めた理由を説明できない
  • 初めての出店で、判断の基準そのものを持っていない
  • 紹介された物件が適切かどうか、自分では判断できない
  • 準備に追われていて、エリア調査に時間を割けない
  • 既存店とは客層の違うエリアに、2号店を出そうとしている

依頼しなくてもよい人

  • 出店エリアが明確に決まっていて、その理由も顧客像から説明できる
  • 同じ商圏で複数店舗を運営していて、その土地勘がある
  • すでに社内に店舗開発の担当者がいて、出店予定のエリアにも土地勘がある

自分がどちらに当てはまるかは、ひとつの質問で判断できます。「なぜそのエリアなのですか」と聞かれて、顧客像から説明できるかどうかです。説明できるなら、その判断は正しい可能性が高いと思います。

いつ相談するのがよいか?

結論から言えば、物件を見に行く前です。

理由は2つあります。ひとつは、物件を見てしまうと判断が引きずられるから。実際に空間を見ると想像が膨らみ、「ここでやりたい」という気持ちが基準より先に立ちます。この状態で客観的な分析をしても、結論を受け入れにくくなります。

実際にあった話です。ある店舗オーナーは、希望するエリアでなかなか物件が見つからず、焦りを募らせていました。ようやく物件が出たときには気持ちが舞い上がり、自社に合う物件かどうかを見極めないまま契約。売上は思うように伸びず、その店舗は1年で閉店することになりました。

待たされた時間が長いほど、やっと出た物件は実際以上によく見えます。だからこそ、判断の基準は、物件が出る前に決めておく必要があります。

もうひとつは、選択肢の数です。エリアが決まっていない段階なら候補は広く取れますが、物件を絞り込んだ後では検討できる範囲が限られます。相談が早いほど、打てる手は多くなります。

とはいえ、すでに物件を見ている段階でも遅くはありません。その物件が適切かどうかを精査するという形でお手伝いできます。契約前であれば、まだ引き返せます。

料金はどう決まるのか?

出店コンサルティングの料金体系は、大きく4つに分かれます。

料金体系 仕組み 向いているケース
件数・案件ごと 提案や調査の件数に応じて課金 出店が単発で、必要な範囲が明確なとき
月額顧問 毎月定額で継続的に相談 複数店舗を継続的に展開するとき
成果報酬 契約成立時に賃料の◯ヶ月分 初期費用を抑えたいとき
着手金+成果報酬 着手時に一部、成立時に残り 調査と実行の両方を任せるとき

注意したいのは、完全成果報酬型は、報酬が契約成立に依存するという点です。初期費用がかからないのは魅力ですが、先ほどの「やめたほうがいいと言えるか」という構造の問題が、ここでも当てはまります。調査や助言そのものに対して費用が発生する形であれば、契約するかどうかと切り離して判断してもらえます。

料金の説明を聞くときは、何に対して支払う費用なのかを確認しておくと、後から認識のずれが起きにくくなります。

プラスバリューの料金体系

エリア提案は件数に応じた料金で、1件目50,000円、2件目90,000円、3件目120,000円、4件目以降は1件追加につき30,000円(いずれも税抜)です。物件のコンサルティング料は着手金50,000円(税抜)と、ご依頼内容に応じたお見積もりとなります。

エリア提案だけを依頼して、物件探しはご自身で進めるという使い方もできます。詳しくは料金プランをご覧ください。サービスの内容はサービス詳細にまとめています。

まとめ:コンサルは「場所を売る仕事」ではない

この記事の内容を整理します。

  • 出店コンサルティングは、物件を紹介する仕事ではなく「どこに、なぜ出すか」を決める仕事
  • 仲介の報酬は契約成立で発生し、コンサルの報酬は調査と助言に対して発生する
  • だからコンサルは「やめたほうがいい」という結論も出せる
  • 物件の媒介・代理には宅地建物取引業の免許が必要。コンサル業務そのものには不要
  • 「コンサル」と名乗っていても、実態が媒介なら免許が必要になる
  • 売上の保証はできない。保証を約束する会社には注意
  • 相談するなら物件を見に行く前。ただし見た後でも精査はできる

出店の相談先が分からないという方は多いと思います。判断の材料がほしいのか、物件そのものがほしいのかで、行くべき先は変わります。「まだエリアも決まっていない」という段階なら、それはコンサルティングの領域です。

駅から探し始めることの問題については「駅で探すと出店が失敗する理由」で詳しく書いています。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。

よくある質問

Q1. 相談だけでも費用はかかりますか?

初回のご相談・お問い合わせに費用はいただいていません。事業の内容やご状況を伺ったうえで、どこまでお手伝いできるか、費用がいくらになるかをご提示します。そのうえでご判断ください。

Q2. 物件の紹介や契約の手続きも対応してもらえますか?

プラスバリューが行うのは、エリアの提案と調査、物件の事業リスク分析、賃貸条件に関する助言までです。物件の紹介・仲介については、提携している不動産仲介業者が担当します。役割を分けているぶん、契約を勧める力が働かない立場で判断材料をお出しできます。エリア提案だけを依頼して、物件探しはご自身で進めるという進め方も可能です。

Q3. 業種によって対応できないものはありますか?

飲食、物販、サービス業など業種は問いません。ただし、業種によって見るべき指標が変わるため、初回のヒアリングで商品特性を詳しく伺います。特殊な許認可が必要な業態の場合は、その要件も踏まえてエリアを絞り込みます。

Q4. 個人事業主でも依頼できますか?法人でも依頼できますか?

どちらも承っています。法人・個人事業主の別や、1号店か多店舗展開かで、お受けするかどうかが変わることはありません。

一方で、ご提案する中身は一件ごとに違います。見ているのは会社の規模ではなく、何を売る事業で、誰に届けたいのかだからです。すでに複数店舗を運営されている場合は、既存店の客層や売上の傾向という判断材料が加わるため、そこを踏まえた調べ方になります。

この記事を書いた人

藤本 千尋

プラスバリュー株式会社 代表取締役社長

慶應義塾大学卒業。在学中に経験したマルタ島とブリスベンへの留学を活かして、中東系航空会社に入社し、現地に移住。ファーストクラス専任客室乗務員として約6年間勤務していました。多国籍のクルーと生活も仕事もともにするなかで、最優秀客室乗務員賞も受賞しました。

帰国後に選んだのは、全くの別業界である不動産業界。日総ビルディング株式会社(現・Space Direction株式会社)に入社し、事業用物件のリーシング営業として多くの物件を満室稼働に導きました。貸主側の立場で賃料の改定や物件の企画にも携わり、賃料や契約条件がどのような理屈で決まるのかを、貸す側の内側から見てきました。

現在は横浜市西区を拠点に、東京・神奈川エリアで店舗・オフィスの出店コンサルティングを行っています。商品特性とターゲット顧客のヒアリングから始めるエリア提案が中心。出店エリアの選定、事業リスクを考慮した物件分析、賃貸条件に関する助言まで伴走します。ご提案するエリアは、いずれも実際に現地を歩いて調査したエリアです。コンセプトは「あなたのための店舗開発部」。物件を探す前の「どこに出すべきか」から支えます。(物件の紹介・仲介は提携不動産仲介業者が実施します)

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